京都撮り歩き(104)京都の町屋(商家)を巡る

 今日の京都撮り歩きは市内に非常に多く、見られる、町屋をご案内いたします。寺社を巡っているとき、珍しい建築意匠の町屋に出会います。京都市内だけで、約50000軒あるそうで、中には空き家もあるようです。京町屋の建築意匠は独特で、もし、少し、予備知識を持って、ご覧になると、非常に面白い、建物にであえます。

 町屋の中には、有料で内覧できるところもありますが、今回は通りすがりで、撮りためた写真で簡単にご説明いたします。東西・南北の通りに、現代的な建物の間に宝ものを見つける感覚で探すことになります。幸い、いくつかの資料がありますので、事前に資料*をご覧いただき、現地を訪れることをお勧めします。

 京都市の定義で「1950年以前に伝統的木造軸組構法で建てられた木造家屋」とされる現在残存する京町家は、1864年の禁門の変ののちに発生した大火(どんどん焼け)以降に建てられたものがほとんどであるそうです。1998年に行われた市の調査によると、市中心部(上京、中京、下京、東山区)で約28000軒が確認され、市内全域で推計5万軒残っているとされていた、江戸時代の京町家は全体の2%で、明治時代のものも14%あった。また、中京区などの都心部では、1996年に行った調査に比べ約2割減少していることも判明。老朽化や住人の高齢化が主な理由とみて、市は調査結果をデータベース化して保存・再生の仕組みや政策づくりに反映させるという。

*参考資料

  ①京都図鑑 JTBパブリシュング編

  ②京の町屋案内 淡交社編★

  ③「おけいはん」 京阪鉄道編  第四十四回 京の町家〈外観編〉★

  ④ 水彩画・京の町並みスケッチ―丸・竹・夷ではじまる大路小路 貝川著★

1、町で出会った代表的な町屋と写真

京都市内で見かけた主な店舗と場所を下の表にしめします。民家についてはプライバシーを
考え、所在地は省略しています。簡単な意匠説明を写真に記入しておりますが、詳細は下の表をご覧ください。


一般的に街中で見られる町屋
2階は改造され、1階に格子が見られます。











「便利堂」です。立派な商家で見事に保存されています。
虫籠窓・暖簾・
京行灯・犬矢来」、見事な瓦屋根


屋根瓦に「鐘鬼」があります。
前の家のとは目線を合わせない配慮があります。



「犬矢来」です。道路からの泥はねを防止する目的です。


珍しい3階建ての町屋も有ります。

バッタリ床几」です。
本来は商品陳列用ですが、お洒落な
民家の入り口にもあります。



2、町で見かけた、立派に保存されている商家
参考までに、店舗と場所をご商売を写真にて、簡単にご紹介します。ほんの一部です。興味をもたれたら、是非、追加でご見学ください。

No,

店名前

場所

商い

1

奇竹堂

富小路東入り

竹工芸

2

彩雲堂

麩屋町東入り

画材

3

鴻基

御池通り

酒店

4

便利堂

弁才天町

美術はがき店

5

菜根譚

蛸薬師

中華料理

6

水口弥

錦小路

暖簾店

7

細野福蔵商店

高倉とおり

仏壇・仏具

8

亀末広

姉小路烏丸東入り

和菓子

9

山中油店

下丸屋町下立売

食用油

10

八百三

姉小路東洞院

ゆず味噌

11

月トカゲ

新町通り三条あがる

居酒屋

12

二条若狭屋

二条通り小川角

和菓子




彩雲堂」です。ここの町屋は立派な京看板があり、絵になります。

奇竹堂」です。格子、虫籠窓出窓が素敵です。
水口弥」です。珍しいデザインの商家です。下の蔵が目立ちます。



細野福蔵商店」です。駒寄。格子など、重厚な風情の町屋です。

亀末広」です。看板と暖簾が素晴らしい2階は居室

民家ですが、駒寄せと西日よけの簾が立派です。
「市指定文化財」です。非常にユニークな町屋です。商売は不明


二条若狭屋」です。典型的な商家スタイルです。

山中油店」です。煙突(煙りだし)の下はおくど(火袋)があるのでしょうか

店の入り口前に「バッタリ床几」がありました。

菜根譚」です。これが京看板です。

鴻基」です。立派な佇まいの商家(酒家)です。
御池通りで目立ちます。


3、京町屋の意匠について

基本的な町屋の意匠用語を資料からピックアップして簡単に下の表にしめします。

構造詳細は資料を参照ください。「おけいはん」がお勧めです。

虫籠窓

虫籠のような形をしていることから「むしこまど」と呼ばれる。漆喰で塗り込められた窓のことで厨子二階に多くみられる。火災が多かった江戸時代に防火対策として用いられ広まった。一説によると、庶民が武士を見下ろさないよう低いとも言われるが定かではない。

 

本2階

明治末期から大正にかけて建てられた様式。2階の天井を高くし、居住用として使われるようになる。 時代の流れとともに、塗り込めの虫か籠窓が、ガラスの窓に変化する様子が見受けられる。

犬矢来

敷地と道路の境界の役割を持ち、泥はねや埃から建物を守る。竹で作られることが多く、丸みを帯びた姿が美しい。中には金属製のものも見られ、その形状は家々の個性が出る。

 

大塀造

「だいべいづくり」と読む。仕舞屋の発展型で、裕福な商人や医者などが住宅専用に建てた塀付きの町家。道に面して塀を立たせ、前栽をはさみ奥に建物が建つ。建物が道路に面していないことが特徴。規模の大きなものになると、母屋の手前に洋館造が建てられていることもある。写真は省略

駒寄

「こまよせ」と呼ぶ。犬矢来と同じく、道と敷地の境界の役割を持ち、泥はねや埃から建物を守る。一説によると、牛馬をつなぎ止めていたとも言われるが定かではない。

 

箱階段

うなぎの寝床と称される京町家において、階段は住みに追いやられる存在。急勾配であり幅も踏み板も狭く、省スペースに作られる。時には押入れに隠されて収納と兼用されることも。階段箪笥とも呼ばれ、可動式のものや壁と一体になったものがある。写真は省略

くど

古来より炊事場は神聖な場所とされ、特に竈(かまど)について京都の人は親しみを込めて「おくどさん」と呼ぶ。時期により、焚き口が複数あるものや、漆喰やレンガで造られるなど種類や規模は様々である。 ちなみに大阪では「へっつい」と呼ばれる。

 

バッタリ床几

揚げみせ、通称「バッタリ床几」がこの世に登場するのはことのほか早く、室町時代の洛中を描く絵図にその姿が現れている。 本来は「揚げ店(あげみせ)」と呼ばれ、商品を陳列して売るための棚であり、必要に応じて上げ下げして使われてきた。 昭和の中頃までは夕方になると、バッタリ床几に腰掛け夕涼みをしたり、井戸端会議の場になったり、ご近所さんと将棋や囲碁を楽しむ社交の場でもあった。

火袋

ハシリの上部に広がる吹き抜け空間のことで、「ひぶくろ」と呼ばれる。炊事の熱気や煙を逃がす空間であり、火事の際に周囲への延焼を防ぐため火を閉じ込める役割を持つ。左右に開口部が取れないため、天窓を設け手元に灯りを落とした。 行きかう梁の造形は、大工の腕の見せ所であり、「準棟纂冪(じゅんとうさんぺき)」と称される。写真は省略

 

出窓

格子が取り付けられた出窓の内側は、障子やすりガラスなどの内戸が入っています。風通しや採光はいうまでもありませんが、出窓によって狭さを和らげる配慮があります。単一となりがちな表構えに、独自の美意識を感じさせる出窓は、京町家の趣を表現するものでもあります。

格子

格子は、中から外は見えるが外から中は見えにくいため、プライバシー保護ができ、同時に、通風も確保できるため、多くの町屋に採用された建築技術です。格子を構造で分けると2種類あります。外壁から突出しておらず、玄関の建具の入っている部分と一直線に格子がある、言い換えると格子の下に空間がないものを平格子(ひらごうし)、逆に格子が、外壁から突出していて、足元が、浮いている状態のものをいい、ある意味で出窓のようなものを出格子(でごうし)といいます。切子(立子の上部が一定の長さで切られているもの)の本数で、その家の職業がわかります。切子が2本で呉服屋格子、3本で糸屋(紐屋)格子、4本で織屋格子といわれています

 

京行灯

行燈には、竹で組まれたものや障子組みのもの、網代、鉄の打ち抜き、打ち出し、銅板の鍛冶によるものなど、多彩なものがあります。金物を工夫して遊び心のある京行燈が面格子の上部に張り出し、看板や暖簾(のれん)などと調和して、京都の情緒をさらに豊かに表現しています。

 

京看板

看板は屋号や商品名、職種などを人々の目線に合わせて、道に直角に表示するものと、表構えに並行して軒下や庇の上に掛けるものとに分けられます。京看板の表現方法や手法、その加工、装飾技術は工芸品でもあり、京都の町並みを個性豊かに飾っています。

は、細く割った竹や葦(よし)、麦藁(むぎわら)などを麻や綿の撚り糸で編み、一枚の板状にしたもので、簾掛けから下げたり、巻き上げたりして使用します。夏の暑い照り返しや西日などを遮りますが、陽射しのないところにも簾が掛かっていることがありますが、これはカーテンの役割を京町家に似合う簾で補っているものです。  

 

暖簾

暖簾はその店の格式と信用を決めるものでもあります。室町時代初期から商家で使われ始め、江戸時代になって急速に進展していきました。暖簾には水引暖簾、長暖簾、半暖簾、花暖簾、縄暖簾、玉暖簾、竹暖簾など多くの種類があります。京町屋の商家の格式を示す水引暖簾は、庇に幅一杯に掛けられます。長暖簾は、鴨居(かもい)から敷居までの丈のながいもので、畳一畳ものを基本として二枚、三枚と合わせていきます。陽光を遮る日除けでもあり、通り庭の中間に掛ける内暖簾は、店と住居と の境を示すものでもあります。

うだつ

「うだつがあがらない」という言葉の語源とされるように、繁盛していることの証であるとされる。実際には、隣家への延焼防止であったり、境界線の役目も持ち、その形は様々である。京都においてその数は少なく、他府県では、愛媛の内子町、埼玉の川越などでは豪奢な卯建を目にすることができる。

 

火災や盗難から商品を守り繁栄を祈願して、家相上、屋敷の北西と南東の位置に蔵を建てました。金品蔵、道具蔵、商品蔵など、酒蔵や醤油蔵、米蔵などとして用いられ、なかには住居の特別室とした座敷蔵などもありました。難を逃れるように、“水”“火”などの文字や家紋を妻側の壁に漆喰で表わします。各地の蔵と比較しますと、京都の蔵は機能性や扉の重厚さ、施錠などの防備に重点が置かれ、意匠にはあまり凝らず簡素な機能美に富んでいます。

屋根

京の町家の軒先を見ると、二通りの形に分けられる。軒の端が波状に連なる「一文字瓦」。 そして、取り合いの部分に丸い瓦が取り付けられ¥る「饅頭瓦」。特に「一文字瓦」は、瓦の端を切り落としたような形が連なり、連続して並ぶその様子は町並みに統一感をもたらし端正な印象にする。 また、連続する軒下のスペースは、通りとともに半公共のスペースでもあったそう。

 

煙突(煙りだし)

竈のある上部で、屋根の棟部分に開口部を設けて、その上に小さな屋根がつくられたものを煙出しといいます。竈などで炊事をした煙を屋外に出すものです。

忍び返し

京町家の下屋に取り付けられる、鋭利な金属や竹を扇状に広げたもの。その名から察する通り泥棒除けである。道に向かって平入りに建つ京町家は、建物の大小があるとはいえ、連続した庇の上は泥棒にとって格好の足場になっていた。そんな泥棒除けの発送から生まれたのが「忍び返し」。扇状に開いたものから、格子状に並ぶものまで形状は様々。写真は省略

 

地蔵

「地蔵盆」が近づくと,町内の人たちは,お地蔵さんを祠から出して,新たに彩色する「お化粧」を行い,新しい前掛けを着せる。お地蔵さんが祀られていない町内は,寺院から借りるか,或いは,仏画を使用するかなどしていることが多い。町内の人たちからお供えを集め,お地蔵さんを祀る祭壇に花や供物,お札(地蔵(じぞう)幡(ばた))などを飾り付ける。火を灯した提灯(ちょうちん)に似ているところからホオズキをお飾りの花として使うことが多い 写真は省略



最後までご覧頂きありがとうございます。紙面の関係で写真を省略しております。ご了解ください。






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